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摘発はイヤ！過激さ自粛、変わるガールズバー　「おにぎりバー」に変身も　


未成年者の雇用や無許可営業による過激な接客が問題となったガールズバーが、ここ最近はおとなしくなった。大阪では府警が違法店を相次いで摘発し、６月に一斉立ち入り調査したことで、風営法の営業許可を新たに取得したり、接客行為を“自粛”したりと業者側の営業姿勢に変化が見られる。中には矛先をかわすためか、「おにぎりバー」など営業形態を変えたケースも。廃業する店も多いが、このままブームは終息するのか、それともイタチごっこはまだ続くのか。（高田清彦）

　「おにぎりバーで～す。いかがですか～」

　大阪のミナミやキタの繁華街を歩くと、最近こんな呼び込みが増えてきた。茶髪にミニスカートといったガールズバーにいるような女の子が、おにぎりの写真付きメニューが書かれた店の看板の前で道行く人に声をかけている。その一人に話を聞いてみた。

　「おにぎりバー？　珍しいね」

　「最近増えているんですよ。おにぎりが食べられてお酒もあるし、朝５時までやってます」

　「前はガールズバーだった？」

　「そうです。今も同じような感じですよ」

　取り締まりが厳しくなる中、ガールズバーが営業形態を変えたのが「おにぎりバー」といわれる。カウンターの向こうに若い女の子が並び、見かけはガールズバーそのままだが、女の子がおにぎりを握ってくれるのがミソ。焼酎やウイスキーも置いてあり、おしゃべりもできて料金もガールズバー並みに何千円かするが、アルコールが“主”ではなく、あくまで「おにぎりを出す店」という体裁だ。

　先の店は、梅干しやシャケなどのおにぎり３個にフリードリンクがつき、１時間３０００円からというシステムだった。

　大阪では、ミナミのガールズバーで店員の１８歳の女子高生が飲酒後に急性アルコール中毒で死亡したり、小学６年の女児に客引きさせていた店が摘発されるなど問題が相次いだ。府警は今年に入って無許可営業などで１９店を摘発したが、うち１０店が未成年者を雇用していた。

　取り締まりの大きな転機となったのは女子高生死亡事件で、府警は事件翌月の３月から６月にかけ、ガールズバーの営業形態などを把握するためキタやミナミで調査を実施。（１）従業員の女の子が客をキャッチする（２）店内で女の子が客に専属的に接客する（３）客が支払うスタッフドリンクがある（４）女性従業員が２２歳以下である－の４つを満たした店をガールズバーと定義し、雑居ビルの一店一店を見て回り、任意で従業員名簿の提出を受けるなどして実態把握に努めた。

　さらに６月２２日には約５０店を抜き打ちで一斉立ち入り調査。府警保安課によると、その結果、繁華街を抱える大阪市内の曽根崎、南、淀川、都島の４署管内にガールズバーは計２２５店あり、うち８割以上の約１９０店で違法が疑われる接待行為を確認したという。

　それらの店に警告を与え、違法営業を改善する誓約書を出させるなどしたところ、７月末までに９店が新たに風営法の許可を取得、１７店が従来の飲食店の許可に加え、深夜酒類提供の許可を取った。

　また営業形態を変えるケースのほか、廃業した店も幾つかあり、女性店員が水着姿で接客したり、「王様ゲーム」をしたりといった以前は目にした“過激”サービスも影をひそめた。

　風営法の運用解釈基準によると、接待とは「歓楽的な雰囲気を醸し出す方法で客をもてなすこと」。客の横に座って杓をしたり、カラオケをデュエットしたりする行為のほか、カウンター越しであっても一対一で２０～３０分程度継続的に話したりすれば「接待」だ。４月には、水着姿の女性店員がカウンター越しに酒を提供するなどしていた行為が「接待」とみなされ、大阪市内の店が摘発されている。

　そんなわけで、挑発的な服装を控えるのはもちろん、おしゃべりが２０分を超えないようストップウオッチを準備する店も現れた。

　ガールズバーは平成１６、１７年ごろに登場したといわれる。バーテンダーに若い女性を起用したところが新しく、客は時間制の料金のほか、話し相手の女性店員が注文した飲み物（スタッフドリンク）代も払うというのがシステム。スタッフドリンクは２０００円、３０００円など割と高く、その売り上げが女性店員にバックされる。客との話が盛り上がったところで、女の子が「もう一杯いただいていい？」となり、客は最初「１時間３０００円」で入店しても、出るときには結構支払うことになる。

　それでもラウンジやキャバクラよりは安く、気軽に立ち寄れる雰囲気も受けて店舗数が急増。競争が激化してサービスがエスカレートし、違法営業が問題となった。

　ガールズバーは食品衛生法上の飲食店として営業しているケースがほとんど。その中には、終夜営業で酒類を提供できる深夜酒類提供の許可を取っている店もあるが、客への接待行為は府公安委員会への風俗営業の届け出がなければできない。ただ風俗営業となれば、営業は午前０時（キタやミナミの一部は午前１時）までで、路上での客引き行為も禁止されるなど制限が多いため、許可をとりたがらない店は多い。無許可営業がはびこる背景にはこうした事情がある。

　また店員に未成年者が多いのは、キャバクラのような本格的な接待業務が必要ないため、１０代の子が小遣い銭ほしさに気軽に勤めにきて、店側も違法な意識なしに雇っていた－という側面があるようだ。

　しかし、相次ぐ摘発を受け業者側の認識も次第に変わってきた。風俗業界の俗語で未成年者は「ミテコ」（「身分証明書が提出できない子」の意味）というが、最近は業界内で「ミテコを使ったら店がつぶされる」などとささやかれているという。

　「指導や警告を続けたことで、業者側も何が違法にあたるのか認識し、改善がみられる。常態的な立ち入り調査は今後も続けるが、一区切りは付いた」。ガールズバーの現状について府警保安課はこうみる。

　若い男性客を狙ったバーの新しいスタイルとして人気を呼び、雨後の竹の子のように増えてきたガールズバーだが、今後もこの路線で進むのか、新たなスタイルを模索するのか、過渡期にきているのは間違いなさそうだ。

産経新聞 8月18日(土)21時49分配信



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